“ことのは”の森 / Column

青竜

 “青い薔薇”は、自然界には存在せず、交配で品種改良しても実現できないことから、その花言葉は『不可能』でした。しかし、永い歳月を経て、日本で初めて青い薔薇が誕生したことで、花言葉は『夢が叶う』『奇跡』へと変わりました。
 今、日本の中小企業の事業承継でも“奇跡”が起きています。後継者不在で悩む中小企業のオーナー経営者が、『私に経営を任せてください!』と申し出てきた、見ず知らずの他人を自らの後継社長として選ぶ。そんな奇跡のような話が起きています。
奇跡を起こす声の主は、“サーチャー”と呼ばれる“経営者を目指す個人”です。自力で資金を調達して中小企業のオーナーから株式を譲り受け、自らがオーナー経営者となり、新しいリーダーとして会社を率いていきます。日本でも、まだ十人ほどですが、サーチャーによる事業承継が成立し、オーナー経営者とサーチャーの奇跡ともいえる縁が結ばれ、『後継者をみつけたい』『経営者になりたい』という、双方の夢が叶っています。
 オーナー経営者が、“自分と同じような経営をしてくれる人”を見つけることは不可能に近いです。経営者と同じDNAをもった息子ですら難しいのに、経営者としての実力も未知数で、見ず知らずの他人のサーチャーに経営を託すという決断は相当なものです。一方で、自ら退路を断ち、自身の信用だけで資金を集め、経営者となって事業を引き継ごうというサーチャーの決意と覚悟も相当なものです。
 こうしたオーナー経営者とサーチャーが出会い、事業承継を成立させるのは奇跡のような確率です。でも、そもそも、人との出会いはすべて奇跡です。もし、『私に経営を任せてください』という声を耳にしたら、奇跡を信じて、耳を傾けてみてはどうでしょう。

 青い薔薇でも、最も青いと言われる薔薇、それが「青竜」です。

・・・ 敬具
(梟)

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